Q&A バルブ編
- Q01
下水道圧送管路に使用されるバルブの種類は? -
下水道圧送管路には、必要に応じて遮断用、管路切替用、ドレン用、吸排気用などのバルブを設置します。外ネジ式ソフトシール仕切弁、外ネジ式金属弁座仕切弁、下水用空気弁(補修弁付)、偏心構造弁などがございます。
詳しくは、こちらまたは「PPS-17 下水道圧送管路の付帯設備技術資料」をご覧ください。
- Q02
内ネジ式仕切弁を使用しない理由は? -
内ネジ式は、弁体と弁棒の接続部分にネジが切っており、その構造上、下水などの異物を含む流体の場合、開閉を繰り返した際、ネジ部に付着した異物が噛み込み作動不良を起こす恐れがあるため、仕切弁は弁の外部にネジがある外ネジ式を採用します。
外ねじ仕切弁
内ねじ仕切弁
- Q03
バタフライ弁の規定は? -
標準仕様書に記載されている概略の規定は、下表の通りです。
項目 制水弁設備 空気配管用弁設備 適用流体スクリーンを通過し、
砂等を除去した汚水又は雨水空気適用規格JWWA B 138に準ずる使用材料弁箱・弁体FC200以上弁軸SUS304又はSUS403シートCR、
硬質クロームメッキ(又はSUS304)耐熱ゴム、
硬質クロームメッキ(又はSUS304)中間軸SUS403(二床式の場合)
- Q04
バタフライ弁を下水で使用する場合、横型(横軸)が多い理由は? -
下水中に含まれる異物は管底に堆積しやすい。立軸であればバルブ底部の軸受け部に異物が侵入して軸受けが摩耗し、作動不良や漏水などの原因となります。従って、下水用に使用されるバタフライ弁は、横型(横軸)が一般的に使用されます。
立軸
横軸
- Q05
偏心構造弁の規定は? -
標準仕様書に記載されている概略の規定は、下表の通りです。
項目 規定 適用流体汚泥最高使用圧力0.3MPa構造概要全開時に弁内の流路に流体を阻害するものがない形状で、
開口面積は呼び径面積の80%以上、トップエントリィ形で保守が容易な構造使
用
材
料弁箱・弁体FC200以上弁軸ステンレス鋼又はFC+ゴムライニング水密部合成ゴム又はメタル駆
動
装
置駆動方式空気シリンダー式電動式形式単作動又は復作動式現場手動操作ハンドル付摘要操作圧力 0.39~0.69MPa フィルター、
レギュレータの使用圧力は0.98MPaとし、
設定範囲が0.02~0.85MPaとする開閉時間 20~40sec 電動機は屋外全閉防まつ形、30分定格以上、ブレーキ無し
- Q06
偏心構造弁は、なぜ汚泥ラインで使用されるのですか? -
偏心構造弁は、全開時に弁体が弁箱内部に収納されて、流路を阻害することがありません。また、弁の開閉は回転式になっているため、軸シール部からの漏洩の危険も少なく、かつ、弁座も機械的に圧着されますので、損傷しにくくなっています。
- Q07
偏心構造弁は、なぜ制御性能が良いのですか? -
偏心構造弁の弁座部は、矩形形状をしているので、矩形のゲートや可動堰のように、開口の面積変化が正比例(リニヤー)に近いためです。仕切弁の場合は、開口の面積変化が複雑で、オン・オフ特性となります。
- Q08
偏心構造弁の流体に対する据付方向は? -
汚泥ラインは比較的低圧(0.3MPa以下)であるので、流れ方向は、基本的に正逆共据付可能です。全閉時、弁体が弁箱弁座に押される方向に(正圧方向設置)、バルブを設置した方がシール性能は良いが、流体中に夾雑物を含む場合は、逆の方向(逆圧方向設置)に設置した方が、弁座に夾雑物をかみ込むことが少なくなります。
- Q09
偏心構造弁を横軸で使用しても良いですか? -
立軸使用が原則です。やむおえず横置きで使用する場合は、弁体が汚泥中に埋もれないよう、弁全開時に弁体が天位置になるように設置することを推奨します。
- Q10
偏心構造弁でトップエントリィ形とは? -
バルブを配管したまま上部のふたを取り外すことで、内部部品を弁外部に取り外してメンテナンスや交換が可能な構造のことで、仕切弁も同様な構造です。
- Q11
下水用空気弁と水道用空気弁の違いは? -
圧送管路では、管内の空気溜まりが通水障害となるため、空気の溜まりやすい管路凸部に空気弁を設置するのが一般的です。しかしながら、汚水や汚泥を輸送する下水管路では空気弁の閉塞が起こりやすく、従来の清水用の空気弁に代わって下水道専用の空気弁が開発されています。
下水用空気弁は、空気弁内のフロートに改良を加え、また内面腐食が起こりにくい塗覆装を施してあるため、空気弁の閉塞・漏水に対する性能向上が図られています。水道用空気弁と下水用空気弁の構造図の例を下図に示します。水道用空気弁との主な相違点は、。
1.弁箱、弁体の構造
下水用空気弁は弁体を大きくし、またフロートと弁体の距離を離して弁箱内に空気溜まりを作ることにより、下水中の固形物が弁体や弁箱内に付着して空気弁を閉塞・漏水させることを防止しています。
2.防食対策
下水用空気弁は、弁箱をエポキシ粉体塗装を施したダクタイル鋳鉄製、弁体をステンレス鋼製とし、防食性能を高めています。
図 空気弁構造比較図
引用文献『土木研究所資料 下水道幹線圧送検討資料集』より
表 下水道空気弁及び上水道用空気弁の特徴
用途 管路保護用バルブ 目的(機能)1).管路内に滞留する空気によって生ずる水撃現象の水圧上昇による管路の破損を防止する
(圧力下排気機能)
2).管路内に負圧を生じた際の真空破壊防止用(吸気機能)
3).管路内充水時の排気用(急速排気機能)種類水道用空気弁下水用空気弁適用流体上水、工水、農水等下水
(ミルクセーキ状の泡が多い流体は除く)規格JWWA B 137無し種類3種類
単口、双口、急速
特殊(不凍式、スプリング式、その他)1種類のみ口径φ13~200φ75(1口径のみ)圧力区分7.5K 10K 16K7.5Kのみ構造空気が中に溜まらないように配慮空気溜まりを設け、止水(気密)部分や重要な部分に汚泥やスカムが付着して、止水機能や可動機能を妨げないよう配慮している。
材質人体に有害な鉛等が水道水に
浸出しない材料汚泥配管等では、著しく腐食性の激しい硫化水素が発生するので、耐食性に富んだ材料が使用される。 本体接液部は粉体塗装本体内外面共粉体塗装保守汚泥やスカムが付着することが考えられるので、数ヶ所に水洗用のポートや窓が設けられている。 設置弁の傾きは、鉛直から2度以内とすること
- Q12
下り勾配での空気弁の設置基準は? -
下り勾配で勾配が変化する場合、下流側の勾配が大きくなると、空気連行ができなくなり、空気だまりができる場合があります。
管内流速と空気連行できる管路勾配の関係は、ケント(J.C.Kent)の式により求められます。管内流速が空気連行の最小限界流速より小さい場合は、空気弁の設置を検討します。
V min 空気連行の最小限界流速(m/s) D 管内径(呼び径でもよい)(m) θ 管路の傾斜角(°) g 重力の加速度(9.8m/s2) 出典:土地改良事業計画設計基準・設計「パイプライン」 基準書・技術書(農業土木工学会発行)