Q&A 設計編
- Q01
圧送方式下水輸送システムの種類は? -
圧送方式下水輸送システムの種類としては、次のようなものがあります。
(1)単一圧送方式
ポンプ場から処理場まで単一路線(多条管路も含む)で圧送する方式。処理場間の送水(送泥)に多く見られます。
(2)多重圧送方式
圧送本管の途中に流入圧送管を取り込む方式。小規模圧力式下水道との併用あるいは物理的・経済的に単一圧送方式がとりにくい場合などに採用されています。
(3)圧送と自然流下
管路の前半が圧送方式で後半を自然流下で送水する方式。地形的に全線自然流下方式がとりにくい場合に採用されています。
(4)多段圧送方式
圧送管路の途中に複数のポンプ場を設けて送水する方式。揚程が大きく単独のポンプで揚水が困難な場合などに用いられています。
- Q02
下水道圧送管路に使用する管きょは、最小管径に規定があるのでしょうか? -
「下水道施設計画・設計指針と解説 前編 -2001年番-」(社)日本下水道協会 §2.2.3 最小管径【解説】の最後行には『圧送管の最小管径については、ポンプ口径、流速、摩擦損失、汚水の種類を総合的に判断して決定する必要があります。』と記述されております。したがって、最適な管路設計となるよう口径を選定すれば良いと考えます。
- Q03
圧送管路の流量・流速の計算は? -
『下水道施設計画・設計指針と解説』では、自然流下管の場合、一般にマニング式またはクッター式を用いています。また、圧送ではヘーゼン・ウイリアムス式が用いられています。
(1) Manning(マニング)式
(2) Kutter(クッター)式
(3) Hazen・Williams
(ヘーゼン・ウイリアムス)式(圧送式の場合)
- Q04
水撃圧ってなんですか? -
圧送管路では、バルブの急開閉、あるいはポンプの急激な始動・停止を行うと、水の運動量が短時間に変化し管路内に異常に大きな圧力波が発生することがあります。この圧力波が発生する作用を水撃作用(ウォータハンマ)といい、発生圧力を水撃圧といいます。
水撃圧は管路の安全性を検討するうえで重要な要素で、圧送管路の構造設計においては、この水撃圧を内圧の重要な設計条件として十分に安全を見込む必要があります。
(1)水撃圧の予測方法
水撃圧を予測する方法は、大別すると経験則による方法と計算等による方法があります。さらに、計算等による水撃圧の解析法には、簡単な系については理論解法があり、複雑な系については数値解析が行われます。計算等による水撃圧は、弾性体理論に基づく非定常流況の基礎式を展開して数値計算により推定します。
水撃圧の予測には、経験則による方法が多く採用されており、次の値が用いられています。
ポンプ圧送:静水圧が0.44MPa未満の場合はその100%、静水圧が0.44MPa以上の場合はその60%または0.44MPaのいずれか大きい値。
(2)水撃圧対策
ポンプ系圧送管路では停電や事故等の理由によりポンプが急停止するため、水撃圧そのもののコントロールが難しいので水撃圧の防止対策が主体となります。この対策は、その主たる目的が負荷の防止または上昇圧力防止のいずれかにより異なります。
負荷の防止には、ポンプの回転部分にフライホイールを付ける方法、吸気弁を取り付ける方法、サージタンクの設置等があります。上昇圧力防止には、パイパス弁付き自動緩閉装置、安全弁の設置等があります。
引用文献『土地改良事業計画設計基準 設計「パイプライン」』より
- Q05
下水道圧送管路の最小土被りは? -
『下水道施設計画・設計指針と解説』には、「公道内に埋設する管きょについては、道路法施工令第12条第4号によれば、下水道管の本線を埋設する場合においては、その頂部と路面との距離は3m(工事上やむを得ない場合にあっては1m)以下としないこと」と記述されています。
また、「ダクタイル鋳鉄管、ヒューム管(外圧1種、2種管)、強化プラスチック複合管、硬質塩化ビニル管、陶管の管種で300mm以下の下水道管の埋設について、電線、水道管、ガス管又は下水道管を道路の地下に設ける場合における埋設の深さ等についてにより、最小土被りを表2.3.1として運用してよいが」との記述もあります。
しかし、下水道圧送管路においては管路凸部に空気弁を設置する必要があること、下水用空気弁(仕切弁を含む)の高さが600mm程度であることから、通常1m程度必要であると考えられます。
以上より、下水道圧送管路の最小土被りは、空気弁やバルブ等の付帯設備の高さを十分考慮して決めることを推奨します。
表2.3.1 浅層埋設基準
下水道管種別 頂部と路面との距離 下水道管の本線 当該道路の舗装の厚さに0.3mを加えた値(当該値が1mに満たない場合には、1m)以下にしないこと。 下水道管の本線
以外の線車道 当該道路の舗装の厚さに0.3mを加えた値(当該値が0.6mに満たない場合には、0.6m)以下にしないこと。 歩道 0.5m以下にしないこと。ただし切り下げ部があり、0.5m以下となるときは、あらかじめ十分な強度を有する管路等を使用する場合を除き、防護処置が必要。 注)ヒューム管(外圧1種)を用いる場合には、当該下水道管と路面の距離は1m以下としないこと。
- Q06
下水道圧送管路の耐震計算は、どのように行うのですか? -
下水道施設の耐震対策は、『下水道施設の耐震対策指針と解説-2006年版』(社)日本下水道協会に準じて行います。指針によると、汚水圧送管および送泥管は『水道施設耐震工法指針・解説』を参考にするとなっています。
また、計算方法については(社)日本下水道協会より下水道施設耐震計算例-管路施設編-が発行されています。こちらも参考にしてください。
下水道施設の耐震対策指針と解説』(社)日本下水道協会より抜粋
表 レベル2地震動に対する機能保持の考え方管路施設 部位 査項目と許容値 マンホール
及び管きょマンホールと管きょの接続部
・マンホールと管きょの接続部における屈曲角及び
抜出量は、土砂流入が起こらない値以内とする。
管きょと管きょの継手部
・継手部における抜出量及び屈曲角は、土砂流入が
起こらない値以内とする。
マンホール本体部・RC構造及びプレキャスト製マンホールは、終局限界状態
以内とする。
・開削工法では、埋戻し土の液状化により浮上がり、 緊急
輸送道路等における車両交通へ支障を与えないように
する。
・プレキャスト製マンホールの組立ブロック継手部の目地
開き量は、土砂流入が起こらない値以内とする。管きょ本体部・管材各々の材質に応じ、断面崩壊等に至らない耐力以内
とする。
・開削工法では、埋戻し土の液状化により浮上がりや路面
沈下により、緊急輸送道路等における車両交通へ支障を
与えないようにする。矩形管きょ
及び開きょマンホールと本体の接続部・マンホールと本体の接続部における屈曲角及び抜出量
は、土砂流入が起こらない値以内とする。本体と本体の継手部・継手部における抜出量及び屈曲角は、土砂流入が起こら
ない値以内とする。
・プレキャスト製で縦断方向に本体を連続的に緊結する
場合は、各継手の開きおよび緊結した本体が縦断方向の
不同沈下等により流下機能に支障を生じさせない値以下
とする。本体部・RC構造及びプレキャスト製は、終局限界状態内とする。
・開削工法では、埋戻し土の液状化により浮上がりや路面
沈下により、緊急輸送道路等における車両交通へ支障を
与えないようにする。シールド
トンネルマンホールとの接合部・マンホールと管きょの接合部における屈曲角及び抜出量
は、土砂流入が起こらない値以内とする。一次覆工部・リング継手部等の部材の破損がなく、リング管の目地開き
量は止水が修復可能な範囲とする。二次覆工部・二次覆工部の鉄筋の有無にかかわらず、ひび割れしても
流下機能に支障を生じないようにする。雨水吐き室
及び吐き口本体部・終局限界状態内とする。
・開削工法では、埋戻し土の液状化により浮上がりや路面
沈下により、緊急輸送道路等における車両交通へ支障を
与えないようにする。汚水圧送管
及び送泥管本体部・「水道施設耐震工法指針・解説」を参考にする。
・開削工法では、埋戻し土の液状化により浮上がりや路面
沈下により、緊急輸送道路等における車両交通へ支障を
与えないようにする。注)ヒューム管(外圧1種)を用いる場合には、当該下水道管と路面の距離は1m以下としないこと。
- Q07
下水道圧送管路に用いる管種は何を用いればいいのですか? -
圧送方式の場合は、ポンプによる高水圧が管に作用するため耐圧性に優れた管種を選定する必要があります。ダクタイル鋳鉄管には上水道、工業用水道、農業用水など高水圧で多くの実績があり、圧送方式に適した管種と言えます。
- Q08
下水道用ダクタイル鋳鉄管の場合の粗度係数や流速係数は? -
マニング式およびクッター式で用いられる粗度径数(n値)は、下水道用ダクタイル鋳鉄管では次の値をとっています。
モルタルライニング管・・・・・・・・n=0.013
合成樹脂ライニング管・・・・・・・・n=0.010また、ヘーゼン・ウイリアムス式で用いられる流速係数(C値)は、110の値をとります。
ヘーゼン・ウイリアムス式のC値
管種 C値 備考 モルタルライニング鋳鉄管 110 屈曲損失を別途に計算するとき、直線部のC値を130にすることができる 塗覆装鋼管 110 硬質塩化ビニル管 110 『下水道施設計画・設計と解説』より
- Q09
下水道用ダクタイル鋳鉄管の継手に使用するゴム輪の材質は? -
ゴム輪は用途に応じた継手用ゴム輪が準備されており、流体に応じた適切な材質のゴム輪を選ぶことができます。
ゴム輪の使用区分ゴム輪の使用区分(JSWAS G-1-2003より引用)
種類 条件 ゴム輪の材料 汚水・汚泥-SBR、EPDM溶剤、鉱物油などが混入する場合NBR雨水・処理水-SBR、EPDM空 気温度60℃以上の場合NBR、EPDM温度60℃以下の場合SBR、EPDM返流水(注)-NBR、EPDM注 返流水は、汚泥の各処理過程で生じる濃縮分離液、消化脱離液、脱水ろ液などを合せて水処理施設に戻す排水を言う。
ゴム輪材料の特性
- Q10
下水道用ダクタイル鋳鉄管を配管する時に圧送する方向や施工方法に対して受口の向きを考慮する必要がありますか? -
配管のしやすさには多少影響しますが、圧送管路の機能上は特に考慮する必要はありません。
- Q11
下水道用ダクタイル鋳鉄管の切管最小長さについて -
切管の最小長さは接合形式や呼び径、また、使用する切管の種類(甲切管、乙切管)や施工条件等によっても異なりますが、一般的な切管の最小長さとしては1m以上とお考えください。
- Q12
下水道用ダクタイル鋳鉄管の異形管挿口に直接継ぎ輪を接合しても良いのでしょうか? -
異形管は、直管と製造方法が違うため規格上挿し口先端から受口に挿し込まれる必要な範囲しか外径許容差が確保されていないので、挿し口と継ぎ輪を接合すると継ぎ輪は軸方向に自由にスライドできるため、施工時に少しずれると許容差範囲をはずれたところで接合されることが有ります。この場合は管の寸法が確保されていないところで継手を接合する事になるため、水密性は保証できなくなるので接合しないでください。
- Q13
下水道用ダクタイル鋳鉄管を曲線布設する時の継手曲げ角度は? -
下水道用ダクタイル鋳鉄管のように継手に可とう性を有する管は、連続した曲げ配管により曲線布設することが可能です。しかし、設計時から許容曲げ角度を全部使って設計すると施工時の余裕がなくなるので、ある程度の余裕を持って設計することが必要となります。
- Q14
下水道用ダクタイル鋳鉄管を用いて露出配管を行う場合に注意する点はありますか? -
下水道用ダクタイル鋳鉄管を露出して配管する場合は、次の点に注意する必要があります。
1.継手部のゴム輪の老化
露出されている継手部には日光、紫外線、酸素などが作用しますが、ゴムが直接さらされる部分はごく僅かであり、特に問題ありません。
2.温度差による管の伸縮
一般に使用されている継手(K形、T形、S形、SII形など)では、管有効長分の伸縮量(6m直管の場合、温度差30℃で約2mm)を十分に吸収します。伸縮量のない離脱防止継手(KF形、UF形など)を用いている管路や鋼管との接続部分では、継ぎ輪や伸縮継手を用いる必要があります。
3.管支持、曲管防護
管の支持は直管1本あたり1~2ヶ所の支持台を標準としています。傾斜地の配管では雨水または地下水の水流による埋戻し土の流出、コンクリート基礎の浮上り、倒れなどが生ずる恐れがあるため十分な支持台の検討、施工が望まれます。
また曲管、T字管などの異形管部にはコンクリート防護工や離脱防止継手などで管が移動しないように固定します。
4.管体防護
道路沿いでは交通車輌の衝突、山地では落石などの恐れがありますので、状況に応じた管体の保護を行う必要があります。
5.外面塗装
環境条件に合った塗料を用います。日本ダクタイル鉄管協会では、露出配管における外面特殊塗装に用いる塗料および塗装方法について規格(JDPA Z 2009-1992)で定めています。
- Q15
下水道に圧送管を採用した事例は? -
最近の圧送管採用事例として下表にまとめました。
最近の圧送管採用事例
当研究会では、代表的な圧送方式の事例をまとめた『圧送下水道採用事例その3』を発行しております。そちらもご覧ください。
- Q16
下水道マンホールポンプ施設の設計に役立つ参考図書はありませんか? -
(財)下水道新技術推進機構より『下水道マンホールポンプ施設 技術マニュアル』が発刊されています。また、『土木研究所資料 下水道幹線圧送検討資料集』には神戸市の事例が掲載されています。
小型マンホール設備
全国の地方公共団体では、道路より低い宅地からの下水排除や小規模な河川横断等のために、小型マンホールポンプ設備の開発とその設計施工要領の作成を行っている。 その中には、貯留能力や臭気対策に対する新しい工夫が取り入れられており、その一部を紹介する。
神戸市/小型マンホールポンプ場
- 緊急時の貯留量を確保するために、ポンプ設備用のマンホールの横に小型の接続槽を設けている。
- 臭気対策として、滞留時間を短縮し下水の腐敗を防ぐためポンプ運転をポンプ井水量とは別制御でタイマー運転とし、また、マンホールに臭気拡散のための通気管を設置している。
- 小型マンホールポンプ場の計画対象は、100戸以下としている。
引用文献『土木研究所資料 下水道幹線圧送検討資料集』より